米澤穂信『インシテミル』感想レビュー◎ 殺人が裁かれないクローズドサークルで人は何を思う− 無機質な雰囲気が堪らないデスゲーム小説

こんにちは、もしかめです。今回は『満願』ぶりの米澤穂信さん著『インシテミル』の感想レビューです。

あらすじ

「ある人文科学的実験の被験者」になるだけで時給十一万二千円がもらえるという破格の仕事に応募した十二人の男女。とある施設に閉じ込められた彼らは、実験の内容を知り驚愕する。それはより多くの報酬を巡って参加者同士が殺し合う犯人当てゲームだったー。いま注目の俊英が放つ新感覚ミステリー登場。

感想レビュー

いつだって、クローズドサークルはミステリーファンの心を捉えてやまないですよね。今作インシテミルも、コテコテのクローズドサークルものでした。

法外な賞金を賭けて、地下施設に閉じ込められた12人が殺し合う、シンプルなデスゲーム。やっぱりこういうシンプルさ、大事ですよね。

タウンワーク的な雑誌に掲載された時給11万2,000円という信じられない求人。どうせ誤植だろうと応募した者、興味本位で応募した者など、計12人が謎の実験施設へ招待されます。

実験のルールはシンプルで、7日間地下施設で過ごすだけ。しかし追加ルールとして、殺人を行う、殺人犯を突き止めるなど、特定の行動を起こすと賞金額が跳ね上がるシステムが。

しかもこの実験中に行われた非倫理的な行為は法の裁きを受けないというとんでも設定。

とはいえ、人を殺さなければペナルティが発生するわけではなく、平和に終われば全員が多額のバイト代を手に出来る状況にも関わらず、起きてしまう殺人事件…。

施設は密室。殺人者が自分のすぐ近くに存在する状況に次第に疑心暗鬼になっていく11人。疑い疑われ、無機質な地下空間でのデスゲームが幕を開けてしまいます。

みんなが集まる部屋のテーブルに置かれた人数分のネイティブアメリカン人形など、クローズドサークル好きにはたまらない雰囲気が魅力。

十角館の殺人やそして誰もいなくなったと異なるのは舞台の無機質さ。地下シェルターのような施設は窓もなければ光も無い空間で、全編に漂う息苦しさがすごい。

殺人者への恐怖もあるのですが、それ以上に得体の知れない場所への恐怖が勝っていて、どちらかと言うと主催者側との戦いの側面が強かったのが印象的でした。

そしてルール設定も今作の大きな魅力。人を殺すともらえる殺人ボーナス、事件の犯人を暴くともらえる探偵ボーナスなどがありますが、1番の肝は探偵ボーナスかと。

この探偵ボーナス、犯人を名指しし推理、それが過半数に認められれば”解決”となる、そんなボーナスなのですが、過半数に認められるだけで良いんです。

つまり、”推理が正しいかどうかは関係ない”ということ。いかにみんなが求めている答えを導き出すか、いかに集団内で立場を作っていくかが重要になってくるんです。

そういった心理的な要素が無機質な雰囲気とうまく絡み、シンプルなのに飽きのこない展開に仕上がっています。

前半から中盤にかけてはスリルのある殺し合い、ラストは怒涛の解決パートと結構しっかり展開が区切られているので一冊で2度美味しい作品でした。

それでは今回はこの辺で。最後までご覧いただき、ありがとうございました。

もしかめ

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ミステリー大好きもしかめが、読んだ本や日常などをだらっと記録していくブログです。

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